私は「さらば宇宙戦艦ヤマト」という作品が嫌いだ。
何が嫌って、特に白色彗星のガス帯を取り除いて以降のストーリーの手抜きっぷりが
どうにも我慢できない。
それ以外にも……。
もともと「宇宙戦艦ヤマト」というのはパート1だけで終了する話だったし、
製作当時は続編の構想などもちろんなかった。
ところが後から出てきて、今ではこれが「ヤマト」なんだと言わんばかりの顔をしている。
たとえるなら追加メンバーのくせにオリジナルメンバーのように物事を語るアイドルのような……
「なんだコイツ?」感があるのだ。
確かにパート1の元になった企画書を読むと、いかにキャラクターを殺して感動を取るかが
「ヤマト」の本来の作品意図であることがわかるし、そういう意味では「さらば」のほうが
最初に意図していた物語なのかもしれない。
が、経緯はどうあれ「ヤマト」は「どこかへ行って無事に生還して地球を救う話」として発表され、
それこそが「ヤマト」であるとファンは認識したはずだ。
それに新作を作るよりも前にやるべきことはあると私は思っていた。
すなわち全51話なり全39話なりで予定されていたストーリーをできる限り拾って見せるリメイク型のパート1だ。
だから当初期待度の低かった「2199」は私の中で徐々に盛り上がり、
今ではオリジナルそっちのけでこちらばかり見ているという状態である。
しかし「2199」には引っかかるものがある。
ガトランティスだ。
「さらば」/「ヤマト2」において白色彗星帝国として地球の敵と設定された一大勢力である。
「2199」では世界観を広げるために登場した……と思っていたが、そうではなくなった。
「星巡る方舟」が製作されたからだ。
ここでガトランティスは明らかに、ガミラスに変わる宇宙の脅威、地球にとっての脅威であるかのように描かれてしまった。
もちろん「ガトランティスは地球に現れることなく時間は流れました」でもいいのだ。
だがそうなる可能性は低いだろう。
興行的な要請があれば「2199」の続編は作られるだろうし、そこに現れる敵がガトランティスである可能性も高い。
結局は「さらば」の現代風リメイクは避けて通れない。
とはいうものの、それは可能なことだろうか?
旧作では続編を作るにあたってとんでもないことをやっていた。
つまりは「以前の世界観や設定はなかったことにするか、あえて否定した上で泥縄的に続編を作る」やり方である。
これに気づいてから、私は「ヤマト」の続編というものに期待をするのはやめた。
いや、これをやっているのは西崎だけではなく、新たに「ヤマト」を作ろうとした、
あるいは作った人間に共通しているのだから始末が悪い。
だから昔の感動をもう一度、と思って新作を見ると見事に裏切られ、神経を逆なでされ、
怒りと絶望で製作者に呪いの言葉を浴びせたくなる。
それはもちろん「さらば」も例外ではないのだ。
パート1を好きなファンが「さらば」に感じた違和感の正体とはまさにこれである。
であるならば「2199」の続編として「さらば」的なものを製作することは可能だろうか?
まったくの不可能とは断言しないが、かなりの難産、それも「2199」立ち上げ以上に苦労するだろうと予想している。
「2199」の世界観を継承しつつ「さらば」的な物語を紡いでいくのは困難である。
要するに旧作のような思想と構造で作品が作れないのだ。
「2199」はパート1を肯定し「さらば」を否定したものだから。
仮に「さらば」的なものを作るとしても大きな問題がいくつもある。
安彦良和による二大発明であるところの「白色彗星」と「新造戦艦」を取り入れるかどうかの問題も含まれる。
「新造戦艦」――アンドロメダである。
「ヤマト2」ではこう説明されていた、
「お偉方はヤマトの勝利を機械力の勝利であると誤解し、血も通わぬ戦闘マシーンを作ってしまった」と。
艦首にある2門の拡散波動砲。主砲塔はヤマトの3基に対して4基。
副砲とパルスレーザー群は艦隊運用を前提としているので省略しているが、主力兵器のみに注目してみれば
ヤマト以上の戦闘艦をめざしたのがアンドロメダである。
しかしアンドロメダは敗北する。完全に運用を間違え、さらに力のあるものに蹂躙されて使命を終える。
アンドロメダは敗北することを前提として作られてしまった戦闘艦だ。
これは敗北でいいのだ。だって、「強くなったものが前より強い敵を倒しました」って構図、おもしろいですか?
おもしろいわけがない、強い敵が現れるからもっと強くしようってのは思考の手抜きだから。
そういう罠にはまったら危ないぞという一種の警告でもあったはず……なのに、その後の「ヤマト」は何をやったか。
スーパーチャージャーなんてものを取り付けて連続ワープ(もしくはワープと波動砲発射の連続技)を可能にしてしまう。
六連波動砲なんていう連発可能の武器を出してしまう。
こちらの流れだけではない。「新・宇宙戦艦ヤマト」で登場したグレートヤマトは艦体が巨大化、砲塔は上甲板・艦底部ともに増加、
どこから見ても無敵の宇宙戦艦になってしまった。
設定自体がすごすぎて魅力が半減するというのはマジンガーZとグレートマジンガーの比較を例に出すまでもないだろう。
不思議なことに強すぎると逆に魅力を感じなくなるのだ。
弱点があるから魅力なのだ。
足枷があるから、製作側はどうやってそこをカバーしながら次へコマを進めるかを考えるのだ。
いや、製作側だけではない。受け手の側も弱点があることを承知しながら見ているし、そこをどうするのかを気にしている。
だからこそ、製作側が受け手の想像を超えた奇想天外な方法を提示し、劇中のヒーローが勝利を得ることで
ストレスが取り除かれカタルシスが生まれるのである。
無敵にしてしまったら受け手の想像以上のものを提示するのが製作側には難しくなってしまう。
だから話がつまらなくなる。
「どうせヤマトが波動砲を撃ったらこの問題は解決しちゃうんでしょ?」
こう思われてしまったらもう終わりなのだ。
さて、「2199」の世界では波動砲の存在自体がタブーである。
そうなると「さらば」的作品に、ヤマトの上位互換的な存在のアンドロメダ的戦艦は登場できるだろうか?
「波動砲装備の戦艦だけでも、今や全世界に数十隻!」とはできないのだ。
地球は復興するだろうが、あの世界と同じにはならないし、してはいけない。
じゃあヤマトは?
コスモリバースシステムの中核となったヤマトを戦闘のために運用させますか? それもありえない気がする。
では波動砲は出ないのか?
実は出せる。
イスカンダルの示した価値観を共有できないものたちが勝手に使うのなら登場させられる。
たとえば、デスラーが生きていたら?
たとえば、ガトランティスが科学奴隷に波動砲装備の戦艦を作らせたら?
波動砲なしの地球(+ガミラス+イスカンダル)と波動砲ありのデスラーand/orガトランティス……は構図としてあり。
(ただデスラーが、蛮族と蔑んでいるガトランティスと共闘はしないだろう
……いや、もっと屈辱的に戦闘艦の一部に生体部品として取り込まれ、隷属させられているとか……?)
一例としてはこんなものになってしまうので……これでは生理的に嫌悪感を抱く人間続出だろう。
まあガトランティスのラスボスは超巨大戦艦(それも波動砲を装備している!)でいいと思うが、
そこからどうやってファンが納得できるラストへもっていくか……だろう。
難しいんだよ、だから。
安易に「さらば、リメイクしましょうよ」では話が成立しないことの一端が伝わっただろうか?
ごめんね、どうにも説明が下手で。
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