インターネット上にはいろいろとデマがとびかっている。
少なくとも私が知っている限りのデータを残しておかないと、
とんでもないことになりそうな予感がするので。
「宇宙戦艦ヤマト」というアニメの製作が松本零士の
参加によって具体的に動き出したとき、
ヤマトはやっと現在知られているようなシルエットに
なった。
コミック版「銀河鉄道999」には試作型ヤマトというのが登場するのだが、
あれは当初、本当に松本零士があの形のラフ図を描いてきたのだ。
しかもご丁寧に戦艦大和と同じく「全長263メートル全幅38.9メートル」の断り書きつきで。
その後スタジオぬえの面々とのやりとりがあってあのスタイルになったわけだが、
実は、ヤマトは設定によって細部が違うのである!
いや、イラストの描き手(加藤直之・宮武一貴・当時の零時社スタッフ・小泉和明等々)によっても
解釈が異なり、これがヤマトの決定版だ!というものは存在しない!
本当に、視聴者・ファンひとりひとりがどこに思い入れがあったかによって
ヤマトの決定稿というのは異なってくるのである。
というわけで、自分の納得のいくヤマトのプラモデルが欲しかったら、自分で作り出すしかないのだ。
何を隠そう、ヤマトの全長は最初のテレビシリーズを製作していたときには決まっていなかった。
パイロットフィルムには「全長298メートル全幅38.9メートル重量83000トン」とテロップが出ていたし、
当時の週刊少年サンデーでの特集ページには全長300メートルと記述されていた。
ヤマトのメカ設定を担当したひとりである宮武一貴氏がヤマトの全長を330メートルと想定していたのは
一部では有名である。ドメラーズII世との比較図でヤマトの全長が330メートルになっているのはその名残りなのだ。
(石津嵐版小説にある全長329メートルはこれに準じたものだろう)
ついでにいえば「ヤマトより小さい」と設定書に記述のあるシュルツ艦の全長は270メートルである。
ところでヤマトの大きさを考えるのに手がかりになるのが艦載機の大きさだ。
コスモゼロの全長は17.4メートル。ブラックタイガーはそれに準ずる。
これを格納庫に3段なり4段なり積み重ねようとすると……残念ながら不可能である。
どう見積もったところで、全長が500メートルは必要だろう。
もっともそこまでスケールアップすれば第一艦橋のあの広々とした空間も再現できるはずなのだ。
ただこれには問題がある。
それはヤマトは劇中で戦艦大和の中から出てきたという描写がある点だ。
だからヤマトは戦艦大和と同等の大きさでなければならない……というのはちょっと違うと思う。
すでに我々は戦艦大和が沈没の際機関部に浸水して水蒸気爆発を起こし、艦橋は吹き飛び
主砲塔は脱落し、艦体が真っ二つになってしまったことを知っている。
もしこの歴史的「事実」とアニメ内でのフィクションを無理矢理つなぎ合わせるのなら、
あの「夕陽を浴びて死んだように沈黙している大和」はレプリカだろうという解釈が出てくる。
かつての大和に繋がるものとしてフィクションを楽しみたい向きからすれば、
この解釈はちょっと受け入れがたいものがあるだろう。
でもこうしないと、膨大な設定書と作中の描写の矛盾が消えないのだ。
とりあえず「ヤマト」は1977年に映画として一般公開された。
そのころに公表されたスペックは「全長263メートル全幅38.9メートル重量62000トン」で
戦艦大和とほぼ同等。
それがかの「全記録集」の中で(つまり「さらば」の公開前)
「全長265.8メートル全幅34.6メートル全高77.0メートル重量62000トン」と記述され、
以降これがヤマトの大きさに関するオフィシャルな数字ということになっている。
ついでなので新造戦艦アンドロメダについても書いておくと、
これは当初「しゅんらん」という名の600メートル級巨大戦艦だった。
(PSのあれは、この「さらば」の初期設定からの引用)
それがヤマトと同等の新造戦艦ということで、
全長275メートル全幅66.2メートル重量98000トンに変更された。
(ちなみに「ヤマト2」当時のテレビランド誌上では全長280メートル重量100000トンだったが
近年は「さらば」の豪華本の記述を優先する傾向にあるようだ)
まあヤマトが500メートルでアンドロメダが600メートルという設定でも(今にして思えば)
よかったような気はするのだが。
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