これは14話。
でも12話で13話で19話な14話。
松本零士の書いた要素に安彦良和や石黒昇や藤川桂介や山本暎一の要素が加わった14話。
そして悲しさと懐かしさと、明日への希望にあふれた14話……。
宇宙戦艦ヤマト2199 (6) (カドカワコミックス・エース)
- 作者: むらかわみちお,西崎義展,結城信輝,宇宙戦艦ヤマト2199製作委員会
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2015/01/23
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (3件) を見る
(amazonにレビューを書いたので、その追記)
これは公式にはまったく触れられていないこと。
かの宇宙戦艦ヤマトの企画書が作成されてのち、実際の放送開始の半年ほど前に
松本零士が参加する。
銀河系中心部へ向かいラジェンドラ星人と戦う話が、大小マゼラン雲を舞台に
ガミラスを相手にする話へと変更された。
ガミラスそのもののアイディアは松本零士によるものである。
その中に「宣伝相」シャベラスターと「その部下」イローゼによるヤマト襲撃のモチーフが
書かれている。
しかし当時のスタッフがこれを持て余したのか、それとも別の理由があったのか、
その話は採用されず、のちにイローゼは七色星団でドリルミサイルに乗り込み、
ヤマト内部を混乱させるスパイに変更される。
しかしそれもボツとなり、かくてシャベラスターもイローゼもマニアのみが知る
幻の存在となってしまった。
2199制作にあたり、旧作の実際に映像化された部分のみならず、
それ以前の段階でボツとなったエピソードからも取捨選択されて再構成が行われた。
その中に松本零士によるモチーフが含まれていたと推測する。
イローゼによるヤマトへの精神攻撃、それを撃退するのが森雪である点まで
あまりにも酷似している。
もちろんシャベラスターがセレステラとして、イローゼがミレーネルとしてよみがえったことに
間違いがないとして、であるが。
(当然出渕裕らはこのエピソードのモチーフを知っているはずである)
この話が公式に出てこないのは……事情を知る人なら理解できることと思う。
さて、本題。
アニメにおいて14話を見たとき、私の頭に真っ先に浮かんだのが、
このボツエピソードだった。
旧作の13話の過去話と絡めた点も含めて、精神攻撃などという表現の難しいものを
よく表現したと感心したものである。
そのようなエピソードを中心に置いて、第6巻はどうなるのか?
これまでのコミカライズでも数々の素晴らしい改変とエピソードの挿入を行ってきた
むらかわみちおである。
今回も期待したところが、それ以上の出来だった。
旧作の12話、13話、19話からの要素を挿入し、アニメ以上の世界観の広がりと
キャラクタードラマへと仕上げることに成功したと思うのだ。
出発は松本零士の書いたモチーフだったが、そこに旧作で安彦良和や石黒昇、
藤川桂介や山本暎一が描こうとした要素を絡ませることで、
良い意味での「ヤマトらしい作品」になったと思う。
むらかわみちおこそ偉大なマエストロだったのではないかと感じさせる一冊。
(補足:旧作の12話はオリオン座アルファ星のエピソード。13話はガミラス人捕虜のエピソード。
19話はリレー衛星によって相原が精神疲労になるエピソード。
興味のある方はぜひ旧作もBDやDVDで)