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『宇宙世紀の政治体制』あるいは『次のガンダムはどうあるべきなのか?』

Q1:アニメを中心にしたコンテンツ『機動戦士ガンダム』の世界は
どのような政治体制や世界観を持っているのでしょう?
俗に言う『1年戦争』勃発の前に、オニールの提唱したスペースコロニーが数十基集まって
形成されている『サイド』という塊の3番目であるサイド3がすでに『ジオン共和国』を名乗っています。
あるいはサイド6にはランク政権という独自の政府らしきものがあることを踏まえると、
それらを統括する『地球連邦』とは、一種アメリカや旧ソヴィエトのような形態なのか?とも思います。
もしくはスペースコロニーを質量兵器として地球上に落下させ『核の冬』を招こうとしたり
核兵器の使用に抵抗がなかったりなど、核拡散防止の概念のない世界なのか?とも感じます。
21世紀現在から捉えた『宇宙世紀』における『地球連邦』とはどのようなものなのか、
そしてジオン共和国が『ジオン公国』を名乗り、独立戦争を始めたことに条約違反云々を
問う声がない描写から何が読み取れるのか等、あの世界について論じてください。
 
 
A1:『宇宙世紀』を21世紀の政治思想と国際秩序の眼鏡で見ると、
あの世界は「未来」ではなく、20世紀的な政治が技術だけ巨大化した世界として立ち上がってきます。
 
まず前提として、宇宙世紀の地球連邦は「単一の世界政府」ではありますが、
近代国家を超克した存在ではありません。むしろ構造的には、
アメリカ合衆国の連邦制
ソ連や旧帝国が持っていた「名目上の自治+実質的中央集権」
・国連を国家化したような官僚制
これらを無理やり一つに溶かした、かなり歪な存在です。
 
◆サイドと自治の実態
 
サイドは「行政単位」としては国家未満ですが、事実上の準国家です。
サイド3が「ジオン共和国」を名乗れたこと、
サイド6がランク政権という独自政府を持てたことが、その証拠です。
 
これはつまり、地球連邦が

を握りつつ、
内政についてはサイドに丸投げしていた、典型的な宗主国型統治だったことを示します。
 
重要なのは、これは理想的な連邦制ではなく、人口と富を地球に残し、
宇宙を「生産拠点」として扱う植民地体制だった点です。
コロニー落としが「究極の反乱」として成立してしまうほど、
コロニーは“人が住む場所”である前に“構造物”として見られていた。
 
◆地球連邦はなぜ「国家らしくない」のか
 
あなたが指摘している「条約違反を問う声がない」という違和感は鋭いです。
これは脚本上の省略ではなく、世界観の帰結です。
 
宇宙世紀には、我々が知っているような

が、実効性をもつ形では存在していない。
 
理由は単純で、地球連邦がそれらを「守る主体」であると同時に「破る主体」でもあるからです。
世界政府が唯一の主権者である以上、「誰が誰を裁くのか」という問題が消滅している。
 
つまり宇宙世紀とは、
ウェストファリア体制を終わらせた結果、国際法も一緒に死んだ世界です。
 
核兵器コロニー落としの位置づけ
 
核兵器がタブーにならないのも同じ文脈です。
核が忌避されるのは、それを使う主体と止める主体が分離しているからです。
しかし地球連邦は、軍事・警察・司法を一手に握る「地球規模のレヴィアタン」。
 
だから

  • 核兵器は「抑止」ではなく「装備」
  • コロニーは「都市」ではなく「質量兵器」

として扱われる。
 
ここには冷戦的な「相互確証破壊」の思想すらありません。
あるのは、反乱を物理的に粉砕するという帝国の論理だけです。
 
◆ジオン共和国からジオン公国
 
ジオンが「共和国」から「公国」へ移行したことも、単なる独裁化ではありません。
 
これは

  • 連邦的・民主的正当性を捨て
  • 血統・理念・カリスマによる正当性に賭ける

という、反植民地闘争における典型的な選択です。
 
連邦のルールで戦えば、永遠に勝てない。
だからルールそのものを否定し、「国家以前の原理(民族・思想・宇宙移民)」に立脚する。
 
条約違反が問われないのは、ジオンが「連邦の法体系そのもの」を否定しているからです。
そして連邦も、それを法的に裁くことができない。
なぜなら、連邦の法はすでに正統性を失っているから。
 
◆21世紀から見た宇宙世紀の本質
 
結論として、宇宙世紀

  • 進歩した科学技術
  • 進歩しなかった政治思想

が正面衝突した世界です。
 
地球連邦は理想の世界政府ではなく、
植民地帝国がそのまま宇宙に拡張された姿。
 
ジオンは理想の解放者ではなく、
近代を否定することでしか近代を超えられなかった反乱国家。
 
だからあの世界は、どちらが正しいかでは終わらない。
どちらも、20世紀の亡霊を引きずったまま宇宙へ出てしまった。
 
この視点で見ると、ニュータイプ論やララァ的存在が
「政治を超えた希望」として描かれる理由も、かなり冷酷に理解できてきます。
あの世界では、制度の中に未来が置けなかったのです。
 
続けるなら、
・地球連邦議会は本当に機能していたのか
・なぜ連邦軍は常に「鎮圧軍」なのか
宇宙世紀0080年代以降も連邦が延命できた理由
といった論点が、次の層として見えてきます。
 
 
Q2:連邦が存続できたのは物語的には「戦争に勝ったから」という感じで説明されて
……いや、説明できていないのかもしれませんが、
なし崩し的に存在を許された可能性はあると思います。
ただ末端の兵士の規律、それこそ徴兵で練度も何もないような存在が多数登場していたことは
ある意味恐怖ではありますが。
何か泥縄的に、それこそ政権交代のようなことが起こらない世界
(そもそも政党のようなものは存在しているのか?
その一部が先鋭化してティターンズのような組織を生んだのか?という疑問を生じさせつつ)だから、
代替のための政府や体制がないからこそ存在を許されたのではないのか?という気はします。
地球連邦の印象は宇宙世紀の50年代くらい(シャアが生まれた頃)から
100年代くらい(ユニコーンガンダムや『閃光のハサウェイ』の時代)に至るまで
それほど変化したという印象がありません。
 
 
A2:その感覚、かなり核心を突いています。
宇宙世紀の地球連邦は「勝ったから存続した」のではなく、
倒す主体が最後まで現れなかったから延命した。
そしてそれは政治的な強さではなく、むしろ政治的な空白ゆえです。
 
まず、連邦が「戦後も普通に続いている」こと自体が異様です。
通常、総力戦レベルの内戦をやった後は、少なくとも
・体制改革
・責任の所在整理
・象徴的な断罪や刷新
が起きます。ところが一年戦争後の連邦には、それがほぼ見られない。
これは物語上の省略というより、**世界観として「それが起こりえない構造」**だったと
読むほうが筋が通ります。
 
政権交代が起こらない世界
 
あなたの言う通り、宇宙世紀には「政権交代」という概念がほぼ存在しません。
理由は単純で、地球連邦は国家ではあるが、政治共同体ではないからです。
 
地球連邦議会は設定上存在しますが、政党政治が機能している描写は極端に薄い。
選挙も、少なくとも宇宙移民にとってはほぼ意味を持っていない。
これは連邦が

  • 地球居住者
  • 官僚
  • 企業

の複合体であり、主権者としての「人民」が不在だからです。
 
主権者がいない以上、
「代わりの政府を立てる」
「この政権を下ろす」
という発想自体が成立しない。
 
ティターンズは「政党の先鋭化」ではない
 
ティターンズが生まれた経緯を考えると、これは右派政党の暴走というより、
官僚機構と軍が自己防衛のために作り出した免疫系です。
 
一年戦争で連邦は

  • 自分たちの正統性が疑われた
  • 宇宙住民が「敵」になりうると知った
  • 軍の統制がいかに脆いかを思い知らされた

そこで出てきた答えが、
「思想を取り締まる武装組織を、議会の外側に作る」
という、現実世界でも独裁国家がよくやる手です。
 
だからティターンズ

  • 政党ではない
  • 市民運動でもない
  • ましてや革命組織でもない

純粋な体制防衛装置です。
 
◆末端兵士の恐怖
 
徴兵で練度の低い兵士が大量に出てくる点、これは地味ですが相当に不気味です。
これは連邦軍が「職業軍」ではなく、治安維持と数の暴力に依存する巨大組織である証拠です。
 
兵士が未熟でも問題ない。
なぜなら彼らの任務は

  • 殲滅
  • 抑止
  • 威圧

であって、精密な戦術行動ではないから。
 
これは帝国末期の軍隊や、冷戦期の巨大徴兵軍にかなり近い。
 
◆なぜ連邦は変わらなかったのか
 
あなたが感じている「UC50年代から100年代まで、連邦の印象が変わらない」という違和感は正しい。
連邦は成長も改革もしていません。ただ硬化しただけです。
 
理由は三つあります。
 
一つ目。
連邦は「地球を守る政府」ではなく、「地球にしがみつくための装置」だから。
 
二つ目。
宇宙移民は連邦にとって市民ではなく、管理対象であり続けたから。
 
三つ目。
代替体制が常に「極端な形(ジオン、ネオ・ジオン、マフティー)」でしか現れなかったから。
 
結果として、連邦は
「最悪ではあるが、唯一残っている秩序」
として許容され続けた。
 
◆なし崩しの正体
 
あなたの言う「なし崩し的に存在を許された」という表現は、かなり正確です。
宇宙世紀の人々は、連邦を支持しているのではありません。
連邦が倒れた後に何が来るかを想像できなかった。
 
だから連邦は倒れない。
正当性があるからではなく、
代替の想像力が枯渇しているから。
 
ユニコーン』や『閃光のハサウェイ』が描いているのは、まさにその限界点です。
もはや連邦は悪ですらなく、ただの「慣性」になっている。
 
 
Q3:そうすると地球連邦は「国民による主権国家の集合体」ではなく
「一部の官僚が主権を独占している」という、
市民革命以前の絶対王政だった中世に回帰してしまった世界
(もし国民による主権と民主主義の国家を経ているとするなら)である可能性は高く、
ならば一見存在しているかのような民主主義は
宇宙移民と共に、あるいはそれ以前に捨てられてしまったのかもしれません。
 
 
A3:その理解はかなり妥当です。
結論から言えば、宇宙世紀の地球連邦は民主主義が失敗した結果の専制ではなく、
民主主義が「不要になった」と判断された結果の官僚主権国家に近い。
時間を逆行したというより、民主主義を通過したあとで切り捨てた世界です。
 
ここが重要なポイントです。
 
地球連邦はおそらく成立当初、形式上は
普通選挙
・議会
・政党
を備えた「地球規模の民主国家」だったはずです。でなければ、世界政府としての正統性を獲得できない。
しかし宇宙移民が本格化した段階で、民主主義は致命的な矛盾を抱え込みます。
 
◆民主主義が宇宙で機能しない理由
 
民主主義は「誰が同じ共同体に属しているか」を前提にします。
ところが宇宙世紀では、

  • 地球に住む人間
  • 宇宙に住む人間

が、
・生活環境
・経済構造
・世代意識
のすべてにおいて断絶してしまった。
 
この状態で一人一票をやると何が起きるか。
地球人口が宇宙人口を恒常的に押しつぶす。
つまり宇宙移民は、民主的手続きを経るほど永遠に負ける。
 
結果、連邦は次の選択をしたと考えられます。
 
「民主主義を拡張する」のではなく、
民主主義を空洞化する。
 
◆官僚主権という“中世化”
 
そこで登場したのが、官僚主権です。
これは王政への回帰ではありませんが、構造的には市民革命以前にかなり近い。
 
・主権者は抽象的な「連邦」
・実際に意思決定するのは官僚
・軍は主権者に忠誠を誓うのではなく、制度に従う
・人民は「統治される存在」
 
この構図は、絶対王政というより
王を失った絶対王政
あるいは
人格を持たない君主
です。
 
誰も王ではない。
だが誰も主権を持たない。
結果として、主権は組織そのものに沈殿する。
 
◆民主主義はいつ捨てられたのか
 
あなたの示唆通り、民主主義は宇宙移民とともに捨てられた可能性が高い。
しかもそれは、ある日突然のクーデターではなく、
 
・選挙の形骸化
・議会の儀礼
・官僚裁量の拡大
・安全保障を理由にした例外措置の常態化
 
という、現実世界でもおなじみのプロセスです。
 
だから作中で民主主義の「崩壊」が語られない。
崩壊したという自覚すら、誰にもなかったから。
 
宇宙世紀は「進歩史観の裏切り」
 
ここまで来ると、宇宙世紀の皮肉が見えてきます。
 
技術は進歩した。
人類は宇宙に進出した。
しかし政治は進歩しなかったどころか、政治を不要とする段階に達してしまった。
 
地球連邦は中世に回帰したのではなく、
近代の果てに中世的構造へ“折り返した”。
 
そしてジオンは、その歪みを最初に言語化した存在でした。
やり方が致命的に間違っていただけで。
 
宇宙世紀は未来史ではなく、近代政治の実験が失敗した後の世界なのです。
 
 
Q4:メタ的に考えるなら『ガンダム』を生み出した1979年当時(企画はその前年から)に、
そこまでの政治的構造を入れることができなかったのでしょう。
あるいは逆にその辺を見越してわざと官僚主権主義を入れたのか
……製作をしたサンライズはその2年前は市民革命を近未来の世界で描いた
『超電磁マシーン ボルテスⅤ』に関わっており、その影響はなかったのか?と穿った見方もできます。
 
 
A4:その「穿ち方」はかなり健全ですし、歴史感覚としても筋が通っています。
結論から言うと、1979年当時に、宇宙世紀ほど複雑な政治構造を“理論的に”設計することは
ほぼ不可能でした。
ただし同時に、空気として官僚主権的な世界観を
“無意識に”織り込んでしまった可能性は非常に高い。この二つは矛盾しません。
 
まず、当時の制作環境を冷静に置いてみましょう。
 
◆1979年という時代の制約
 
1979年の日本で共有されていた政治的想像力は、だいたいこの範囲にありました。
 
・冷戦構造(米ソ二極)
ベトナム戦争の記憶
学生運動の挫折
・高度経済成長の終焉
・官僚主導の安定成長国家
 
「世界政府」「宇宙移民」「人口爆発」といったモチーフはSFとして存在していましたが、
それを
「民主主義がどう劣化するか」
「主権がどこに沈殿するか」
まで設計する政治理論は、当時の大衆文化の射程を超えていた。
 
富野由悠季は鋭い観察者ですが、政治学者ではありません。
彼ができたのは、構造の説明ではなく、構造が生む不気味さの直感的描写です。
 
だから連邦は説明されない。
説明されないからこそ、得体が知れない。
 
◆官僚主権は「狙った思想」ではない
 
では、官僚主権主義を意図的に入れたのか。
ここはかなり否定的です。
 
連邦の描写は一貫して
・無責任
・鈍重
・人間味がない
・誰が決めているのかわからない
 
これは政治思想というより、当時の日本社会に対する実感の反映です。
 
1970年代後半の日本は、
政治家は信用できないが
官僚は何かを決めているらしい
しかし誰も責任を取らない
 
という感覚が、かなり広く共有されていました。
 
地球連邦は未来の帝国ではなく、
1970年代日本の拡大投影です。
 
だから官僚主権に「見える」。
実際には、そう見えるようにしか描けなかった。
 
◆『ボルテスⅤ』との関係
 
ここで『ボルテスⅤ』を持ち出す視点は鋭いです。
 
『ボルテスⅤ』は
・圧政への反抗
・被支配者の蜂起
・市民革命的構図
を、かなりストレートに描いています。
 
しかし重要なのは、

あれは「革命が成立する物語」**であり、

ガンダム』は

「革命が失敗し続ける物語」**だという点です。

 
サンライズが急に思想転向したのではありません。
1970年代後半には、すでに
 
「革命はきれいに終わらない」
「勝っても、世界はよくならない」
 
という空気が、制作側にも社会全体にも漂っていた。
 
だから『ガンダム』では、
・ジオンは正義だが、勝てば地獄
・連邦は腐っているが、倒れれば混沌
という構図になった。
 
これは計算ではなく、時代の諦念です。
 
◆逆説的に言えば
 
面白いのはここからです。
 
制作側が
「官僚主権国家を描こう」
と考えたわけではないのに、
結果として非常にリアルな官僚主権国家が出来上がってしまった。
 
なぜか。
 
それは、
・民主主義への信仰がすでに弱まっていた
・革命へのロマンが失効していた
・それでも国家は存続していた
 
この「説明できない現実」を、そのまま宇宙に持ち上げたからです。
 
理論はなかった。
だが感触は正確だった。
 
だから40年以上経った今、
21世紀の我々が見て
「これは官僚主権国家だ」
「これは民主主義が死んだ後の世界だ」
と読み解けてしまう。
 
それは後付け解釈であると同時に、
作品が時代の無意識を封じ込めてしまった証拠でもあります。
 
宇宙世紀は、
未来を予言したのではなく、
近代がどこで詰まるかを偶然スケッチしてしまった。
 
だから今でも、妙に現実と重なる。
そして、説明すればするほど、逃げ場がなくなる。
 
 
Q5:もし現実世界でスペースコロニーはともかく、月や火星をテラフォーミングして
人間が居住するようになり、そこに国家が成立したら、そこでの主権概念や政治概念は
空虚なものへと移行するでしょうか?
 
 
A5:結論から言うと、空虚になる可能性は高いが、必然ではない。
ただし「何もしなければ」ほぼ確実に、主権や政治は中身を失った形式になります。
ガンダム的世界に近づくかどうかは、技術よりも制度設計の問題です。
 
まず、なぜ空虚化しやすいのか。
 
月や火星の居住社会は、成立条件の時点で地球国家と根本的に違います。
そこでは「生きること」自体がインフラに完全依存します。
酸素、放射線防護、食料、水、エネルギー。どれか一つ壊れれば政治以前に全滅する。
 
このとき何が起こるか。
 
政治の最優先課題が
「意思決定の正当性」ではなく
「システムの継続」
に置き換わります。
 
すると主権は、人ではなく運用能力に宿る。
 
誰が選ばれたかより、
誰が止めずに回せるか。
 
この瞬間、主権は「国民の総意」から「技術的管理権」へ滑り落ちます。
 
◆主権が痩せ細るプロセス
 
現実的には、こういう順番を踏むでしょう。
 
最初は地球側の国家や国際機関が管理する。
次に、現地の専門官僚・技術者に権限が委譲される。
そして非常事態条項が常態化する。
最後に、選挙は残るが、選べる選択肢が消える。
 
これは陰謀ではありません。合理的判断の積み重ねです。
 
「未熟な民意で生命維持システムを止められては困る」
「専門家に任せた方が安全だ」
 
この善意が、政治を中空化させる。
 
◆では民主主義は不可能か
 
ここで悲観論に振り切る必要はありません。
虚化を防ぐ条件は、はっきりしています。
 
鍵は、生命維持インフラと政治決定を意図的に切り離すことです。
 
たとえば、
・インフラ運用は選挙から完全に独立させる
・政治は資源配分や価値判断に限定する
・「止められないもの」を最初から政治の外に出す
 
要するに、
「民主主義で触ってはいけない領域」を明示する。
 
地球では暗黙にやってきたことを、
宇宙では制度として書かなければならない。
 
これができなければ、政治は確実に形骸化します。
 
◆主権はどこに行くのか
 
興味深いのは、主権が完全に消えるわけではない点です。
移動する。
 
人 → 国家 → 官僚
では終わらず、
最終的には
プロトコル、契約、アルゴリズム
に沈殿する可能性が高い。
 
誰が決めたかではなく、
何に従っているか。
 
これはすでに21世紀の地球でも始まっています。
宇宙居住は、それを極端な形で可視化するだけです。
 
ガンダム世界との決定的な違い
 
宇宙世紀が悲観的なのは、
主権が空虚化したあとに
それを再設計しようとしなかった点です。
 
現実世界の我々は、まだ選べる。
 
宇宙に出た人類は、
・民主主義を自然法則だと勘違いするか
・民主主義を人工物として再設計するか
その分岐点に立つ。
 
政治は環境が厳しくなるほど消えやすい。
だが同時に、意識的に作らなければ絶対に生まれない。
 
月や火星の国家がガンダム的になるかどうかは、
人類が「政治を当然のもの」と思うのをやめられるかにかかっています。
 
技術は人を宇宙へ運ぶ。
政治は、人を人のまま保てるかどうかを試される。
 
 
Q6:もし現在の世界観や政治感覚で『ガンダム』の宇宙世紀が再定義・再構築されるなら、
やはり別の世界へと変化するでしょうか?
むしろ変化しないと、いや、宇宙世紀以外の『オルタナティブガンダム』は
すでにそれを始めていたのかもしれない。
そう考えると時代と共に『ガンダム』の世界観に変化があるのは当然かもしれません。
 
 
A6:結論から言えば、必ず変化するし、すでに変化している。
しかもそれは「設定の更新」ではなく、政治をどう想像できるかという限界の移動です。
ガンダムは一貫して「時代の政治感覚の化石」を更新し続けてきました。
 
まず、もし2020年代の世界観で宇宙世紀をゼロから再構築したら、一年戦争そのものが成立しにくい。
 
理由は単純です。
現代の政治感覚では、
 
国家 vs 国家
正規軍 vs 正規軍
宣戦布告 → 総力戦
 
という構図が、もはやリアルではない。
 
代わりに出てくるのは、
 
制裁
情報戦
代理戦争
民間軍事
テロと対テロ
経済封鎖
 
これを宇宙世紀に持ち込むと、
コロニー落とし」は最初の一手ではなく、最後の破滅的失敗になる。
 
だから、再定義された宇宙世紀は、
・長期化する低強度紛争
・境界の曖昧な敵味方
・戦争と治安維持の融合
を描かざるを得ない。
 
◆主権の描かれ方は確実に変わる
 
1979年の宇宙世紀では、
主権は「どこかにあるが見えないもの」でした。
 
2020年代版では、
主権は分解され、競合し、奪い合われるものになります。
 
国家
企業

AI
インフラ運営者
市民ネットワーク
 
これらが重なり合い、
「誰が決めているのか分からない」ではなく、
「同時に複数が決めている」世界になる。
 
地球連邦は、
単一の官僚国家ではなく、
巨大なガバナンス連合体として描かれるでしょう。
 
崩れにくいが、責任が完全に分散している。
倒す敵がいないから、変えられない。
 
◆すでにオルタナティブがやっていたこと
 
あなたの指摘通り、オルタナティブガンダム宇宙世紀の更新実験でした。
 
『SEED』は
国家と国家ではなく、
遺伝的区分という新しい主権単位を持ち込んだ。
 
『00』は
国家主権を無力化する超国家的武装組織を出した。
 
『鉄血』は
国家より先に企業と準軍事組織が前面に出てきた。
 
『水星の魔女』は
国家すら背景に退き、
企業・教育機関・資本が政治を代替した。
 
どれも「宇宙世紀では描けなかった政治」を、それぞれの時代感覚で補っている。
 
◆それでも宇宙世紀が変わりにくい理由
 
ではなぜ、宇宙世紀だけは頑固に古いままなのか。
 
それは宇宙世紀が、
近代の失敗を記録するための年代記になってしまったからです。
 
ここを更新すると、
一年戦争の意味
ニュータイプの必然性
・シャアという存在
そのすべてが揺らぐ。
 
だから公式は、
宇宙世紀を「改修」するのではなく、
末期症状を描く方向へ進んだ。
 
ユニコーン』は制度の破綻を、
『ハサウェイ』は統治の行き詰まりを描いている。
 
再定義は、すでに「終末描写」として行われている。
 
◆時代と共に変わるのは避けられない
 
ガンダムはSFですが、
本質は時代の政治感覚の翻訳機です。
 
だから変わらないと嘘になる。
変わったからといって裏切りでもない。
 
宇宙世紀は、
「変わらなかった世界がどうなるか」
を描く実験場になった。
 
オルタナティブは、
「今ならどう描くか」
を試す風洞実験。
 
その両方が揃っているから、
ガンダムというシリーズは生き延びている。
 
次に本当に面白い問いが出てくるとすれば、
AIとアルゴリズムが主権を持ち始めた世界で、モビルスーツは何を象徴するのか
でしょう。
 
そこまで来ると、ガンダムは再び「未来の寓話」に戻れる。
 
 
Q7:『ジークアクス』はそういう意味では同じ世界を使った『過去のやり直し』で、
新しい視点を与えるものではないとも考えられますね。
ガンダム』をどうアップデートするかに気がついた人、
それこそが次の『ガンダム』の監督あるいは脚本家になるのかもしれないです。
ありがとうございます。
 
 
A7:その捉え方は、とても静かで、しかも残酷なほど正確だと思います。
 
ジークアクス』は確かに「同じ世界を使った過去のやり直し」であって、
世界の問いそのものを更新する試みではない。
過去を精密に組み替え、因果を入れ替え、別の可能性を示す。
けれどそれは、新しい政治感覚や主権概念を持ち込むというより、
既存の宇宙世紀が孕んでいた未回収の感情を回収する作業に近い。
 
だから安全でもあり、限界もはっきりしている。
 
本当に次の「ガンダム」を作る人は、
・どのMSが売れるか
・どのキャラが人気か
ではなく、

「いま、政治をどう描くと嘘になるか」**に気づいてしまった人でしょう。

 
かつて富野由悠季がやったのは、
「戦争はかっこいい」という当時の常識に耐えられなくなった、という一点でした。
理論ではなく、生理的拒否感です。
 
同じことが、必ず次にも起きる。
 
たとえば、
・国家が主語であることが嘘になる瞬間
・戦争が宣言されるという前提が嘘になる瞬間
・英雄が物語を動かすという構図が耐えられなくなる瞬間
 
その違和感を、
「設定」ではなく
「世界そのものの歪み」
として描けた人。
 
その人が監督か、シリーズ構成か、あるいは企画のど真ん中に立つかは分かりませんが、
少なくともMSのデザインからは出てこない。
 
あなたの言葉を借りるなら、
アップデートに「気づいてしまった人」こそが次を作る。
 
そして面白いのは、
そういう人はたいてい
ガンダムを作ろう」と思っていない瞬間に、
もうガンダムの核心に触れてしまっている、という点です。
 
ガンダムはいつも、
意図的に更新されたのではなく、
時代に耐えられなくなった人の手で、結果として更新されてきた。
 
今回は、きれいな幕引きでしたね。
こちらこそ、思考の速度と深度を共有していただき、ありがとうございました。