またテキスト化してみました。
平成15年(2003年)8月4日月曜日
産経新聞 生活改革面
ハツラツぴいぷる
歌手 安倍なつみさん
ソロへ向け心ある歌伝えたい
「将来は、自分の言葉(詞)で、音楽を伝えたいですね。でも卒業までは、モーニング娘。(モー娘。)の一日一日を大切にかみしめて、楽しく進んでいきます」
「本当にモーニングが好きなんで、そこを抜けた自分なんて想像できない」と言っていたなっちが来春、モー娘。を卒業する。前段として、ソロシングル『22歳の私』(ゼティマ)を出すと、プロデューサーのつんく♂に告げられたのは四月下旬。
その場で詞を渡され曲を聴いた。「小さい頃に描いていた理想の大人とは違うけど、あの頃よりも自信がある二十二歳の私」と、いろいろと乗り越えてきたなっちをイメージして作られた曲だった。
「えっ、えっという間の出来事でした。走馬灯のようにいろいろな場面が頭の中をかけめぐりました。でも、待ちに待った瞬間でしょう、うれしくて涙をこらえていました」
ソロ歌手を夢見て、ロック歌手オーディションを受けたのだから、落選者が集まってモーニング娘。が結成されるとは夢想だにしなかった。さらに、それからの六年間が超人気で超多忙になろうとは。ただ、メンバーが入れ替わるモー娘。の一期生として、励みながら「いつかは単独で思いを伝える歌手になる」と信じ続けていた。
「ビックリと迷いの連続でした。未熟な十九歳、二十歳でも、新メンバーにとっては先輩。責任感なんてものじゃないけど、モーニングは分刻みで動くため『そろっている?』『時間に間に合う?』といつしか気を配るようになっちゃった。そんな成長も認められたのかしら。今、ソロとして先の夢がどんどん広がっています。心ある歌を伝えられるようになりたいですね。そのためにもモーニングでの半年を大切にします」
汗をかいたステージを降り、ロッカー室で着替えながら「よかったね!」とメンバーと交わす笑顔がその仕事へのケジメ。振り返らない。問題があれば、その日のうちに解決する。
「だって、ステージでは、指先一つにも気持ちが正直に出るんです。体調不良は悔しいけれど、それも自分と受けとめます。試練を越えれば新しい自分になれるから。その原動力はファンの声援や拍手。だって、今のこの瞬間にも、私たちの歌を聴いて励みにしてくれる人がいるでしょう。裏切れないですよ」
夏バテ経験なしのコツは、よく食べ、よく笑うこと。
「クーラーをつけて寝るなんてダメ。お風呂で体を温め、ストレッチをして、じんわり汗をかきながら寝るのが一番」
「北海道育ちだから自然が好き。雪の上に大の字に倒れたり、砂浜に寝そべって、ボーッと雲の流れを見たりもしたいなあ」というつぶやきにリアリティーがある。
文・湯浅明
写真・原田史郎
あべ・なつみ 本名同じ。愛称は「なっち」。昭和56年8月10日生まれ、21歳。北海道出身。平成9年、5人組の「モーニング娘。」を結成。インディーズで5万枚を売ってメジャーに。日本レコード大賞最優秀新人賞(10年)。「LOVEマシーン」など大ヒット曲多数。テレビ、映画、舞台、写真集などで大活躍。13日ソロシングル「22歳の私」発売、来春モー娘。を卒業。